「まさか」が起こる前に ― 高麗橋付近で発生した外壁崩落事故を受けて
2026年5月10日午後9時半ごろ、大阪市中央区の阪神高速環状線高麗橋料金所の近くで、道路沿いに建つ4階建てビルの外壁が崩落し、折れた標識が走行中のタクシーに衝突する事故が発生しました。
タクシーのドライバーと乗客が軽傷で済んだのは、人通りや交通量が少ない夜間であっただけで、もし通勤時間帯や人通りの多い時間帯であれば、さらに重大な事故となっていた可能性も十分に考えられます。まさにただの偶然であったというべきかもしれません。
今回の事故を受けて、改めて定期報告や外壁の全面打診調査の重要性について考えさせられる出来事となりました。
外壁の劣化は、目視だけでは分からないことがあります
外壁タイルやモルタルは、経年劣化等により 内部で“浮き”が進行している場合があります。この浮きは、見た目には異常がなくても内部で劣化が進んでいるケースが多く、ある日突然、剥落事故として表面化することがあります。
建築基準法第12条に基づく特定建築物定期調査では 、竣工後・外壁改修後10年を超えた特定建築物について、原則、外壁の落下により歩行者等へ危害を加えるおそれのある部分について、全面打診等による調査が必要となります。
定期報告未実施には罰則も
建築基準法第101条では、定期報告を実施せず、または虚偽の申告をした者について100万円以下の罰金が規定されています。
もちろん重要なのは罰則そのものではなく、「事故を未然に防ぐこと」です。
タイルの剥落等で怪我人が出た場合等の所有者責任
また、外壁剥落事故による責任は、民法717条にも関係してきます。これは、建物などの工作物に瑕疵(通常予想される危険に対して通常備えているべき安全性を欠いていること)があり、第三者へ損害を与えた場合、所有者等が損害賠償責任を負うというものです。
工作物責任は「無過失責任」と呼ばれており、所有者の「知らなかった」「気付かなかった」等といった事情は、責任を免除する理由にはなりません。
定期報告や外壁調査は単なる法対応ではありません。「調査をしたからもう大丈夫」ということはなく、大きな指摘がなくともその状態を維持管理することが大切ですし、指摘箇所は事故が起こる前に改善する必要があります。
建物利用者や通行人の安全を守り、建物の資産価値を維持し、安心して建物を使い続ける。そのためにも、今回の事故をきっかけに、改めて建物の維持管理について考える機会としていただければ幸いです。
大阪建物病院でも、赤外線外壁調査や定期報告業務等を通じて、皆さまの建物の維持管理と事故の未然防止の一助となれればと思います。









